夜は案の定、談話室で打ち上げパーティーだった。
一体だれがどこから持ってきたのか、あたりにはホッグスヘッドのバタービールの瓶が山ほどある。
クイディッチの選手を囲んで、寮生はてんやわんやで優勝を祝っていた。
本格的に夜がやってくると、さっきまでバタービールを飲んでいたリリーがうとうとしはじめた。
「私、先に寝てくるね」
「…あ、おやすみリリー、」
軽く手を振ると、リリーはまた思い出したように振り返った。
「今日、ルーピンとはしゃべった?」
「…え?、ええっと…」
一瞬だけ、まだパーティーの渦にいるリーマスを見た。
歓声を浴びているジェームズのとなりで、バタービールの入ったマグカップを持っている姿が見える。
今日は1度だけ目が会っただけで、しゃべってはない。
ちょっと残念だったけど、また明日話しかけてみようかな、とも思った。
「ううん、なんだか…リーマス忙しそうだから、」
そう言って笑ったら、リリーは残念そうに眉尻を下げた。
「そう…。じゃあ、またあしたね、」
おやすみなさい、と手を振るとリリーは女子寮の階段を上っていった。
それを見届けたあと、しばらくほかの寮生と混じっておしゃべりをしていたけど、さすがに眠たくなってパーティーから離れることにした。
「…?」
寮の階段をあがろうとして、ふと名前を呼ぶ声が聞こえて立ち止まった。
自然と、胸が高鳴るのがわかる。振り返ったらやっぱり、リーマスだった。
「あ…、こんばんは、リーマス」
「もう寝るの?」
「うん…リリーも先に寝ちゃった」
私が笑ったら、リーマスもそっか、とうっとりするような笑顔で笑った。
「それ、に似合うね」
「…へっ?、あ、ありがとう…、」
リボンのことだとわかって自然と口元が綻む。
急に恥ずかしくなって、口ごもりながら手は無意識に髪のリボンに手を伸ばしていた。
パーティーの喧騒はすぐそこ。なのにそれが、今どこか遠くのものに聞こえた。
いまここにリーマスと立っている場所は、不思議な空気に包まれてる。
そう考えたら、じんわり体がしびれた。
「それから、言う機会がなかったけど…、お誕生日おめでとう」
そう言ってからリーマスはちょっと頭を掻いて、「なにもなくて…ごめんね」と肩をすくめた。
「…あ、ううん!おめでとうって言ってくれて、嬉しいよ、」
笑って、言った。
嬉しかった、
ほんとうに、ほんとうーーにうれしかったけど、なんにせよ、すごく恥ずかしくって私は顔が火照るのを押さえようと至極至極必死だった。
ありがとう、とか、なんだか曖昧なお礼を言いながら、私はそそくさと、そこから逃げ出すように階段を上がろうとしていた。
「あ…それから、」
突然きゅっと腕を掴まれるのを感じて、ふらふらと振り返る。
なぜか一瞬、リーマスの姿が見えなかった。
「おやすみ」
リーマスがパーティーの渦中に消えてしまってから、はようやく我に返った。
顔がわあっと熱くなって、すぐに階段をのぼって部屋にかけ込む。
驚いたリリーがベッドから顔を出して、心配そうに「どうしたの」と声をかけたけれど、必死になんでもないと訴えた。
の手は始終、キスをされた右の頬を隠したまま。
…そして、夢のような16の夜がおわる。
これからの16歳の毎日が、すてきな日々になる気がした。
(2010.08.19)
リーマスのほろよいって絶対かわいいと思う。
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