わたしには好きな人がいます。
名前はリーマス・ルーピン。
鳶色の毛が特徴です。セーターが良く似合います。
勉強もできるし、とーっても優しい!
そして笑顔がとーってもすてき!
ぐいぐい。
「?…ふぬ?」
いきなり腕に何かが当たった気がしてふと横を見ると、朝のトーストにかじりつきながらジェームズがひじでこづいてきた。
しかも、目がニヤニヤしてる…!
「……!」
一気に顔が赤くなったのを感じて、ごまかすためにマグカップに口をつけた。
…しまった!まだ飲み物入れてなかった!
気づいたときにはもう遅くて、恐る恐る横目でジェームズを見ると「やれやれ。」とでも言いたげな顔をしてる。バ、バカジェームズ!
仕方なくジェームズと同じようにトーストにかじりついた私はたぶん、すごく複雑な顔をしてるんだろうな、
なにせ思ったことがすぐ顔にでちゃう(とジェームズに言われた)から、ジェームズにバカにされた悔しさと、さっきリーマスに例のやさしい笑顔を向けられた嬉しさと、
はずかしいのを隠そうとして顔が変に引きつってるのが嫌と言うほどわかる。
リーマスに気づかれませんように…!
少し目を上げると、幸い彼は私から受け取った蜂蜜のびんを持って中身をトーストにぬっていたところだった。
よ、よかった…
まだマグが空だったことを思い出してミルクに手を伸ばす。
「ムーニー。君、最初の授業はなんだったっかな?」
思わずミルクを注いでいた手が滑りそうになった。
「え?僕?えーっと確か天文学だった気がするけど。何かあるの?」
ジェームズに言いながらも蜂蜜をぬっている手を止めないのがちょっとうれしい。
「んー。いや、ない。」
「……?」
え、何でもないのに聞いたの?
大丈夫かなこの人と思いながら横にいるジェームズを見ると、さっき見たときよりもっとおかしそうな顔をしていた。しかも、笑い出したいのをこらえるかのようにのどがくっくっと鳴っている。
あ…れ…?
「……!」
自分のことをからかってたんだと気づいて、かっとまたほっぺが熱くなるのを感じた。
…やなやつー!
リーマスに「あ、、ハチミツとってくれる?」と話しかけられてからこの間30秒。
自分でもこの気持ちの波には感動する。
「恋する乙女は大変だねー」
私の心を読みとったかのように小声で言ってるこのめがね人間がホントにむかつく!
リーマスのことあいつになんか一言も言ったことないのに(まさかリリーが言うはずないし)いつの間にか知ってるし、おまけにそういう私をバカにしてくる!
それもリーマスが思いっきり目の前にいるときは本気でかんべんして欲しい。
くそー、いつかジェームズにも仕返ししてやるんだから!
がぶっとトーストにかじりつくと、パン粉が思いっきりひざにこぼれた。
* * *
どうしたんだジェームズ?
ピーターじゃあるまいし、どうでもいいこと普通わざわざ聞くかな。いや、ピーターでもしないか。
やっぱりジェームズ、ついにおかしくなっちゃったのか。リリーが聞いて泣いちゃうよ。
ううん、まてよ。なんだかジェームズが笑ってるように見える。僕さっき顔赤くなってたかな…。
いや、ないね。ジェームズが僕をからかうなんて100万年くらい早い。
朝ごはんを食べ終わると、みんなで席を立って寮に一度戻った。僕は天文学の教科書をひつかむと教室まで走った。今日も駆け込みセーフかななんて思いながら今日の授業について思い出す。確か今日、何かのグループ決めって言ってたっけ。
案の定、鐘が鳴る少し前にドアをくぐった。教授が入ってきて扉を閉めるとカツカツと教卓のあるあたりへ歩いてきた。
「みなさんこんにちは!今日はいい天気ですね!覚えていらっしゃるとは思いますが今回は皆さんにグループになってやっていただきたいことがあります!」
はっきり言って僕はこのホルキンズとか言う女の教授が苦手だ。
僕がジェームズなら、真っ先に悪戯の標的にすると思う。
「観察…と言ってもお遊びじゃありませんからね。…では皆さん、隣に座っているお友達とペアになってくださいね!」
言うなり教室の中がざわつきはじめた。僕は右隣に目を向けると、ハッフルパフのネクタイをした女の子が僕の方を見てにっこりしていた。
「私たち、一緒ね」
「うん」
「私、リジーって言うの。ハッフルパフよ。」
僕も微笑みかえした。「僕はリーマス・ルーピン。グリフィンドールだよ」
「そう、よろしくねルーピン君!」
話していると足早に教授がやってきた。なんだか意味のわからない笑みを浮かべて僕たちの前にひらりと一枚の羊皮紙をのせていった。
これからしばらく、僕たちは2人で天体観測をすることになった。
授業後も途中までいっしょに廊下を歩いた。今日の夜に第一回目の観察をしなきゃいけないから、早いとこ他のレポートも片づけてしまおう。
「…じゃあ、8時になったら寮までいくわ。」
「うん。…あ、えっ…?屋上で待ち合わせたほうがいいんじゃない?」
「平気よ。寮の場所だいたいわかるわ。」
「遠回りになっちゃうよ…?」
「いいのいいの。じゃ、またあとでねルーピン君。」
階段をまたひとりでのぼりはじめると、後ろからダダダダッと駆け足で階段を上がってくる音がする。
振り向かなくても僕にはわかった。「シリウスとジェームズ。」
「「当たり!」」
左にシリウス、右にジェームズが来たと思うと両側から肩を組まれた。
「今の子は誰だいムーニー?」
「俺らの寮じゃなかったみたいだな」
「なかなかかわいい子じゃないか」
「付き合ってんのか?」
僕の“嫌な予感”っていうのはだいたいどんな時でもあたる。
今も絶対こう来ると思った。
「天文学の子。星の観察でいっしょに組むことになったんだ。」
ため息混じりで言うといきなり両肩が軽くなった。ふとジェームズを見れば、やけにあいつの眼鏡が近くにある気がする。いや、本気で近い。
「ムーニー。君、忘れてないよね?」