授業後、シリウスと教室を飛び出すと前方に僕らのリーマスが見たことのない女の子と歩いてた。
「「………」」
シリウスと目が合うと、お互いに一度だけうなずく。
以心伝心って、こういうことを言うんだね!
とりあえずやつのあとをゆっくりとつけていき、別れたと思われた瞬間に2人でやつのあとをものすごい勢いで追った。
「シリウスとジェームズ。」
「「当たり!」」
僕らのことを見ないでもわかるのは他でもない“愛の力”だ(と思う)。
「今の子は誰だいムーニー?」
「俺らの寮じゃなかったみたいだな」
「なかなかかわいい子じゃないか」
「付き合ってんのか?」
がしっと肩を組みながらまくしたてる。
「天文学の子。星の観察で組むことになったんだ。」
ああなるほどね。でも聞きたいのはそこじゃない。
「ムーニー、君、忘れてないよね?」
顔をぐっと近づける。あ、おま、一瞬あとずさったな!
「え、えーと、それは何の話かな、」
やつは僕が顔を近づけるなり、さりげなく(だが確実に)目線をはずした。
「水くさいなムーニー!“に告白する”って話じゃないか!」
肝心な部分をわざと大きめな声で言ってやる。
「おいおい、覚えてないのか?なんならまた勝負してもいいんだぜ?チェス。」
シリウスもにやりと笑って迫った。
「あれは君たちが、「チェスでは俺に負けるはずがないって?ムーニー、人生ってのはなにが起こるかわからないんだぜ」
「とにかく男の約束だ。君には約束を守ってもらおう。」
「そうだな。今週中ってところかな」
「満月前のほうがいいだろムーニー?」
やつの肩に手をかけたままじっと熱い目線を送ると、やつは諦めたようにため息をついた。
「…せめて満月後。」
「よーし!」
僕はリーマスの背中をすぱぱーん!とたたいて叫んだが、まだ落ち着いているシリウスは満足していない様子だ。
「満月前のほうが良いんじゃないか?」
「心の準備ができればね、」
「お前な、告白なんて“好きだ”のたった3文字だぜ」
「僕も、善は急げだと思うなー」
また一瞬の沈黙があった。
リーマスはずーっとまっすぐ一点を見つめてる。おお、腹をくくったみたいだ。
お。男前だぜリーマス!
「…罰ゲームはちゃんとやるよ。」
「でも、満月前は自信がない。シリウスみたいに慣れてるわけじゃないし、にとって善とは限らないし…」
さあ、それはどうかな!
心の中でニヤリとしてシリウスを一瞥した。
ま!いつ告白しようが結果は同じか。
2人がくっつくのは早くみたいけど、
「オッケー!」「いいぜ!」
* * *
「さあ、」
「なに、リリー?」
夕食を食べ終わって寮にもどる途中だった。
「、このあいだレポートの手伝いしたときに『お礼はなんでもするから!』って言ったわよね?」
「ああ!そうそう!明日、ホグズミード行くときに何かおごってあげるよ!」
にこにこしながら言ってくれるのは嬉しいんだけど、ごめんね。
今回は断らせてもらうわ…!
「うーん…、私、考えてたんだけど、」
「なに?」
「私のお願い1つきいてくれる?」
言った瞬間目を輝かせて「うん!何でも言って!」というは本当に天使!
これはいじめ甲斐があるわ…。って、いじめてるわけじゃないのよ。
「じゃあ今日、」
「今日?」
「ホグズミードに」
「うん、」
「リーマスを誘って」
「…ええー?!」
びっくりしすぎて一歩あとずさったの顔はかーっと赤く染まっていた。
「む、むりよ…」
これはあなたのためよ!…とも言えず。
うん。ここはなんとか私の力量で強引に行くしかないわ!
「ねぇねぇ。約束、守ってくれるわよね?」
ほんの少し(…少しだけよ!)すごみを効かせて言うと、とたんには肩をすくめてたじろいだ。
「えっ……そ…」
「……」
「…ん〜、、」
「……」
「…う…」
「う?」
「う………ん…。」
そう!それでいいのよ!
心の中で大ガッツポーズをして勢いよくに向き直る。
「じゃあ決まり!そんなに難しいことないわ、なにも“告白して”なんて言ってるわけじゃないんだもの」
「リ、リリーってば!」
顔をさらに赤らめて、は慌てて小声で叫んだ。
あとはリーマス、あなたの力量次第ね。
満面の笑顔のまま、あとでルーピンをどうやってからかおうか考えながら寮に戻った。
* * *
どうしよう
寮に向かいながら、どうやってリーマスを誘うかとかリーマスに断られたらどうしようかとかそればっかり考えてたから、合言葉を言おうとした瞬間に中からリーマスが勢いよくでてきたときは本気で死ぬかと思った。
「「うわあ!」」
びっくりしたのは私だけじゃなかったみたい。
「あ、ごめん、!大丈夫だった?」
「う、うん、平気!あれっ、リーマス、どこいくの?」
「僕?…あ、ちょっとね!」
なんだかよくわからない仕草をすると、リーマスは「じゃあね!」と行ってしまった。
…よくわからないけど、すごく急いでるみたい。そういえばさっきも夕食を一人早く食べ終わって寮に戻ってたっけ?どうしたんだろう…
首をかしげながら寮のドアをくぐろうとすると、すぐ後ろのほうでリーマスの声が聞こえた。
「ごめん遅くなっちゃって…」
「ううん、平気。行きましょ」
…あれっ、女の子…?
気になってくるっと振り返ったけど、リリーが私のすぐ後ろにいたからリーマスの姿が見えなかった。
「どうしたの?」
「あ、ううん!な、なんでもない」
あわてて談話室に入ると、ふたりでいつものソファーに体を沈めた。
とにかく、いまはホグズミードのことだけ考えよう…