「お前らふざけんなよ!」



* * *



医務室でいつのまにか朝になっていたのに気づいたは、リリーが起きる前に部屋に戻らなきゃと言ってリーマスと一緒にこっそり寮の扉をくぐった。
誰もいないはずの談話室になぜか人の気配がすることに不思議に思ったふたりは、 暖炉脇のソファをちらと見て飛び退く。そこには、険しい顔をしたリリーとシリウス、眠たそうにあくびをして眼鏡の奥でにやにや笑っているジェームズがいた。


リーマスとが驚いて顔を見合わせたあと、ふたりは申し訳なさそうに一緒に頭を下げた。
「ごめんなさい…」
「ごめん、」



そして、冒頭の怒号。


「お前らふざけんなよ!」



「まーまーシリウス落ち着いて。」
「落ち着いてられるはずないでしょ!どれだけ心配したと思ってるの!」

相変わらずヘラヘラ笑っているジェームズをリリーが厳しくたしなめる。
ジェームズはシリウスの腕をしっかり掴み、ふたりに襲いかかろうとしているのを止めていた。
リリーはの元へ駆け寄ると、これでもかというくらいにきつく抱きしめた。


のベッドが空なのを見てもうーびっくりしたわ!」
「そうさ、夜中にいきなりリリーにたたき起こされて何事かと思ったよ」
「とにかく無事でよかったわ!」
「なーにが無事でよかっただよ!俺たちが心配してる中一緒に帰ってきてこのざまだ!」
「いいじゃないか、やっと我がムーニーとがくっついてくれたんだ!嬉しいじゃないか!」


言いながらジェームズはリーマスの背中をばしばし叩いた。驚いてリーマスがむせたのにも構わず。
「…え?…なんでわかったの?」
「わっかんねぇわけねえだろーが!お前ら見ただけでわかんだよ!」
「そうさ、バラが舞ってるのが見えないのかい?」
「…バ、バラ?」
顔を赤くしてとまどうが呟くのを見て、ちょっと落ち着いたリリーがため息をついた。


「本当に、子は三界の首かせってやつね…」
「まあ僕たちの努力もムダじゃなかったってわけだ」
「まぁお前らがちょっとでも俺らの言うことに聞く耳でも持ってたら、はじめから勘違いなんて起こらなかったろうによ」

もうお前らの世話なんかこりごりだぜとか言いながらシリウスがリーマスの腕を掴む。
シリウスはふたりを一瞥してニヤリと口の端を上げると、態度をがらりと変えて楽しそうに喋りだした。


「じゃ、これから朝食までの時間まるまる使ってお前らのドラマチックな告白シチュエーションを聞かせてもらおうじゃないか」
後ろにいたジェームズもすぐに食いついてきた。リーマスの横から肩に腕を乗せ、眼鏡をきらりと光らせる。

「それはいいね!根ほり葉ほり聞かせてもらおうじゃないかムーニー!」
「わ、ちょっジェ…」
「あとムーニー坊や、今だから言うが、あの時のチェス大会でお前が負けたゲームにはちょっとした仕掛けをしておいたんだ」
「…やっぱり」
力無くうなだれるリーマスを、シリウスとジェームズが強引に大広間まで連行する。

三人ががやがや言いながら肩を組んで談話室から出ていくと、後に残ったとリリーが顔を見合わせる。
ふたりとも静かに笑うと、あとの三人に付いていくようにして談話室を出た。


いつもより賑やかな、満月後の朝だった。




End

(2010.1.5)



    



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